私が色々思った話。

好きなもの追っかけたりして思った話とか。

よりによって閉幕後に舞台「よりによって」のレポをする。②

完全にタイトルで遊びたかっただけの記事を書きます。そのに。

 

吉村卓也さんの一人舞台、「よりによって」を観劇してきました。

伊村製作所というお笑いコンビの《閉鎖》後、初めての独り舞台。いえ、一人舞台。

 

4本のオムニバス形式で、脚本、出演、開演前の裏ナレすらも吉村卓也さんのみで構成。

さすがに全部一人だと、自己満だけになってしまうからと演出はシナリオ大賞受賞経験のある福島カツシゲさん。

 

俳優→芸人→俳優を経た吉村卓也さんならではの舞台が完成していました。

1本ずつ、内容と感想を書いていこうと思います。後編。

ただ、4本ともタイトルは無いので表題は雰囲気で付けてます。

…と思ったら書いてる時に吉村さんがタイトルを発表したのでこの記事からそのタイトルでいきます。

 

3本目「幸せの一本線」

 

-世の中には、幸せになりたいという人がいる。

もし、辛い思い出をひとつ残らず取り除くことが出来たら。

人は幸せになるのでしょうか。

 

イーゼルを持った男が出てくる。

男はイーゼルを開き、スケッチブックを乗せた。

女性の横顔が途中まで描かれたページを開く。

 

-彼の記憶は1日しか持ちません。

ある日、彼のことを「可哀想に。」といった人がいました。

 

「可哀想?そんなことねぇよ!どんなに酷いこと言われても一日経ったら忘れちまう、こんな気楽はことはねぇだろ!」

 

-ある人は、「羨ましい。」と言いました。

 

「な、そうだよな!」

 

-でも次の日、彼は彼のことを可哀想だといった人も、羨ましがった人のことも忘れていました。

でもそんな彼が唯一覚えている人がいました。

 

「どうだ綺麗だろ?昨日夢でみたんだ。それがすっげぇ幸せな夢でさ。」

 

-彼は毎日その夢を見ました。そして毎日、彼女の絵を描きました。

彼は完成させたいと思って、その人のことを思い出そうとします。

しかし考えれば考えるほど、眠くなっていくのです。

 

「アンタ…誰なんだ?」

 

-絵は優しく微笑んで、「おやすみ」と言いました。

 

電話がなり、彼が目を覚ます。

 

-彼の一日は決まってこの電話から始まります。

 

「アンタ誰なんだ?毎日俺にかけてるのか?そんな無駄なことさっさとやめちまえよ。」

 

-彼の朝はいつも不機嫌でした。

 

「うるせえな!ていうか、彼ってなんだ!俺にはちゃんとハジメっていう名前があんだ!苗字?苗字は…忘れちまった。」

 

ハジメは夢を見ませんでした。

こんな日は、思い通りにいかないことが立て続けに起こります。

 

画材が切れたハジメは、寒空の下に繰り出す。

 

-よりによってこんな日に。

そう思いながら歩いていると、ハジメはある人を見つけました。

その人は癇癪を起こした時のように泣きじゃくりながら、目の前の店から出てきました。

しかしハジメの目には、その人が幸せそうに笑っているように見えました。

不思議に思ったハジメは、「ガム」と書かれた店の中に入り、長い廊下を歩きながらどんなガムが売っているのか想像しました。

 

「涙が出るほど美味いガム?」

 

ハジメは、涙を流す自分を想像しました。

 

「こう、ふわふわで、飛んでいきそうなガム?」

 

ハジメは、ふわふわを飛ぶ自分の姿を想像しました。

 

「噛んだら幸せになるガム?」

 

ハジメは、クシャクシャに笑う自分の姿を想像しました。

そしてたどり着いたドアをあけました。

 

「なんだよ。なんにもありゃしねぇじゃねえか。」

 

ハジメは、がらんとした店の奥にいた店員のような人に声をかけました。

 

「何を売ってるんだ?」

 

-すると店員は呆れたように「また来たんですか?サカモトハジメさん。」と返しました。

 

「坂本?それが俺の忘れた苗字なのか?俺は前にもここに来たことがあるのか?」

 

話を聞くと、ハジメは毎日この店にやってきているという。

そしてこの店は、人の辛い思い出を取り出してガムを作り、黒い箱の中に入れて閉まっておくという「魔法のガム屋」だった。

俺にもくれ。というハジメに対し、店員はガムは客が作る。と伝える。

さっき店の前で泣いていた男が、ガムを作ったから泣いていたと思ったハジメは作り方を聞く。

店員は、ハジメには作れない。と断る。

 

「そうか、辛い思い出を材料にするから、思い出のない俺は作れないのか。でも待てよ?俺は前にもここに来たんだよな?その時に辛い思い出を取り出したはずなのに、なんで楽しい思い出も残ってねぇんだ?」

 

ハジメは騙した!と店員を問い詰める。

店員は楽しい思い出が残るとは言っていない。と言う。

『混じりっけのない楽しい思い出なんてありません。』

楽しい思い出の中には、辛い思い出がある。

辛い思い出を取り出した人は、その日から新しい思い出を作り始める。

でもハジメは、新しい思い出を作ることが出来ず、毎日描いている絵の人が誰なのか思い出せず辛くなり、毎日ガムを作りに来ていた。

薄い思い出から作られたガムは、1枚の板にすらならず、米粒のようなものが出来るだけだった。

『幸せな自分に気付かずに、辛い自分を取り除くと、一体何が残るのでしょう。』

 

「一?」

 

『辛いにはない、幸せの一本線がどういう意味なのか。』

 

ハジメは米粒のようなガムをかき分け、最初に作った1枚のガムを取り出し、持ち帰りました。

 

「このガムには、俺の辛いが詰まっているのか?」

 

ハジメは店の前で泣いていた男が、ガムを噛んだから泣いていたと気付く。

ハジメは恐る恐る、ガムを口に運ぶ。

 

-やめときな。震えるほど怖いんだろ?

 

「この絵を完成させたいんだ。」

 

-その人、いつもお前の隣にいたんだよ。

 

ハジメにそう言う《誰か》は、

ハジメが初めてガムを作った時も、ずっと隣にいたと言う。

 

「アンタは誰なんだ?」

 

-俺はお前が忘れた思い出だよ。

 

ハジメはガムを噛んだ。

一口かむごとに、辛いが蘇る。

けれどハジメは噛むのをやめず、絵を描き続けた。

 

-絵が完成して、ガムの味がなくなった頃には朝になっていました。

 

電話がなり、ハジメは躊躇いながらも受話器をとる。 

 

「…アンタが、俺の幸せの一本線だったんだな。」

 

ハジメは泣きながら、幸せそうに笑って言った。

 

-電話の向こうの絵の人も、きっと同じ顔をしていたでしょう。

 

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4本の中で唯一、ストーリーテラー的な存在がいる話。

まずハジメの風貌が好きでした。

ゆったりとした暗めのサルエルパンツに、革の靴。少しへたったTシャツに、オーバーサイズのロングシャツを羽織る。

ハットを被り、トランクとイーゼルを持って入ってくる。

出てきた瞬間に「この話はきっと好きだ。」と思った。

案の定、好きだった。

まずハジメの性格がいい。

記憶が無くなる。というと切ない話が多い中で「気楽だ」と言い切るハジメ

ストーリーテラーと会話するのも予想外で良かった。

 

ガムの店に入って、想像をしているハジメの表情の変化が本当によかった。

文章では伝えきれないのはこういう所。求厶円盤化or画像。

それまでどちらかというと不機嫌の多いハジメがウキウキとする。

でも次の瞬間、また不機嫌になる。

この話はハジメの一喜一憂がとても良かった。

 

そして私が何よりも好きだったのは

ガムを練るシーン。

辛い思い出を取り出して、ガムにする。のところの動きが、本当に良かった。

文字だと全く伝わらないけれど、本当に良かった。

そして「米粒のようなガムをかき分けて、一枚のガムを取り出した」という一文と動きが本当に良かった。

「初めてガムを作ったのはいつなんだ?どんな辛い思い出だったんだ?」

そうハジメが聞くシーンがあって、その表情が本当に良かった。

 

この話は個人的に一番好きだった。

それと同時に、唯一気に入らない部分があった話でもあった。

私は最後の「幸せの一本線だったんだな」と電話の奥の~のセリフは欲しくなかった。

出来れば、電話を取って泣きそうな顔で笑う表情をする。という無音で終わって欲しかった。

ハジメがセリフじみたセリフをあまり言ってなかったからかもしれない。少しハジメには似合わないと思ってしまった。

他の人がどう捉えているかも分からないし、むしろその一文を言う為に書いた物語かもしれない。

でも物語の中で、ハジメにとっての一本線は彼女であるということは予想がつく。

ガムを噛んだ男と同じように、泣いてるけど幸せな笑顔になった表情で終わって欲しかった。と私は思った。

 

4本目「バー」

バーのマスター横田が、掃除をしていた。

扉に取り付けたベルが鳴り、人が入ってくることが分かる。

 

「すみません、今日はもう終わりなんですよ。またのご来店を、お待ちしております。」

 

入ってきた女性客に頭を下げ、掃除を再開する。

 

「可愛い人だったなぁ。惜しいことしたかな。」

 

少し自惚れしているかのような独り言。

トイレから客が出てきて、横田は掃除道具をしまった。

 

「時間?大丈夫ですよ。丸山さん、今日はとことん呑みたいって顔してます。常連さんですから、顔見れば分かります。何か飲みますか?…じゃあ温かいお茶、ご用意しますね。」

 

横田はお茶を用意しながら、何か言いたいことがあるのでは?と話を聞く。

話し始めた丸山によると、丸山は5年前に愛し合っていた彼女と会う約束をしているのだという。

 

「ちなみにその場所って?…このバーの前にあったお店。つまりそのお店が無くなったから、そのままスライドして私の店になったと。もしかしてその約束の日って……?今日?」

 

『えーーウソウソさっきの人!?』

 

「彼女さんは、どんな人だったんですか?…優しい人だったんですね。」

 

『性格どうでもいいんだよな、顔だよ今は顔が知りたいんだっつーの!』

 

「芸能人でいうと、誰に似てます?…いや、興味があって…広末涼子。……空気入れ替えましょうか。」

 

横田は外に顔を出す。

 

『広末さーん!!!!』

 

先程追い返した女性が、丸山の約束の人だと確信した横田。

 

「返しちゃいましたすみませーん!!」

 

落ち込む丸山に、横田は冷めてしまったお茶を新しいものに変える。

バツの悪い表情で掃除を始めた横田は、彼女じゃないかもしれない。も呟き始める。

 

「でも約束の日なら、そんなにすんなり帰らないでしょう?……帰りますよねぇ、僕が終わっちゃいましたって言いましたもんね。」

 

マスターのせいだ。という丸山に、横田は必死にどうにかしようと考える。

 

「連絡先は?…一緒に消した。住所は?…変わった。」

 

連絡の手段がなく、落ち込む2人。

自分の見た目が変わったから、多分一目会っただけじゃ分からない。という丸山。

 

「大切なのは見た目じゃないですから。愛し合ってるなら会えますって。」

 

その時、店の電話がなる。

 

「かもかもかもかも!?もしもし!……鮫島さんかよ!!…あぁこの人知り合いの刑事さんで…って丸山さん!?!?」

 

電話の相手が違うと知った丸山は店を飛び出した。

 

「多分曲がって……って行っちゃった。俺のせいかなぁ……?あっ電話!!…切れてるよねぇ…俺のせいかなぁ?俺のせいだなぁ。」

 

ベルが鳴り振り向くと、鮫島がやってきていた。

 

「さっきは電話すみません…。なにか飲まれますか?…ああ、お仕事中なんですね。温かいお茶………用意出来てまーす!なにか事件ですか?」

 

横田は丸山が手をつけなかったホットティーをそのまま鮫島に出す。

刑事の鮫島は、付近に潜んでいる強盗犯を追っていた。写真を見せられた横田は、32歳と言われ、若く見える。と呟く。

黒いジャンパーに黒いズボン、黒いスニーカーに黒のバック。あごひげ。

鮫島に言われた特徴をメモする横田。

知り合いには居ないといい、鮫島はバーを後にした。

 

「黒いジャンパーに黒いズボン……スニーカーは…黒だったな。あごひげ………。」

 

特徴が丸山さんと合致し、そんなことない。と考える横田。

でも刑事と聞いた途端に飛び出したのもおかしい。

 

「でも顔が違った……顔?丸山さんは顔を見たらわからないって言ってた……整形??いやまずなんで俺は強盗犯と丸山さんを一緒にしようとしてるんだ!!最近ハマってる妄想サイトのせいだ。」

 

再びベルが鳴る。

 

「さめじ………広末さん!!あっ広末さんじゃないんだ。あの丸山さん…と約束してる…ですよね!!お待ちしておりました!!先程は追い返してしまってすみませんでした。あの時は丸山さんトイレに行ってて…もうマジで出てくる5秒前だったんですけど…。」

 

横田は女性に事情を伝え、きっと丸山さんは帰ってくると伝える。

なにか飲みますか?と聞くと、結構です。と答えたので、横田はまた温かいお茶を入れた。

 

「どんなに変わっていても、心で通じあってます。何も言わず、抱きしめてあげてください。…ちなみに、丸山さんっておいくつなんですか?…32。」

 

『ビンゴだろ!?』

 

横田は一人で考える。

彼女に真実を伝えるべきか、伝えないべきか。

伝えるべき!と思い話そうとするも、伝えることが出来ず、よりによってトイレに行く彼女に対して「ごゆっくりどうぞ。」と言ってしまう始末。

 

その時ベルが鳴り、横田は丸山が来たと思い振り向く。

 

「って鮫島かよ〜。あっすみませんすみません!…だから女の子は用意できませんって。いつも女の子のお尻ばっか追いかけてるんだから。後輩には鬼の鮫島って言われてるみたいですけど、うたでは鬼ごっこの鮫島って呼ばれてますよ。って痛い痛い痛い痛い!!!…落とすなら……俺じゃなくて…犯人…落としてくだ……」

 

横田は締め上げそうな勢いの鮫島におされる。

ところで。と話を聞くと、どうやら犯人は共犯者と会おうとしているらしい。

横田はその共犯者が女性だと信じ、でもどうにか2人を再開させたい。と考える。

 

トイレから出た女性を鮫島に会わせないよう引き止める横田。

 

「彼、刑事なんです!!!逃げてください!!」

 

鮫島の方を向く横田。

 

「…ありがとう?違います鮫島さん、この方は鮫島に用意した女性じゃないです!!」

 

女性の方を止める横田。

 

「丸山さんじゃないです、彼は刑事さんなんです!!ってあぁ!?」

 

横田の前で、2人は抱き合った。

混乱する横田は考えに耽ける。

 

「あぁ…………丸山さんの下の名前…ケイジさんだった…。。刑事さんをケイジさんと間違えてる……。」

 

そこにベルが鳴り、丸山ケイジさんが現れる。

 

「丸山ケイジさん来ちゃったよ……これは殴られちゃ」

 

丸山さんに殴られる横田。

 

「なんで俺!?!?」

 

混乱しながらも、慌てて事情を説明する横田。

とりあえず2人に逃げてもらおうと動く。

 

「この2人を守れるのは俺だけだ!だって僕は、マスター。ですから。」

 

音楽がなり、それに合わせるかのように横田が訴え出す。

 

「鮫島さん、2人を見逃してください。」

「丸山さん、整形なんかしなくても………え??整形してない??」

 

鮫島は既に強盗犯を捕まえていた。

つまり丸山さんは強盗犯ではなかった。

そして整形もしていなかった。ただ激ヤセしただけだった。

居心地の悪くなった横田は「蛍の光」を流し始める。

 

「皆様、閉店の時間です。また、明日は定休日となっております。…約束の日、明日じゃなくてよかったですみませーん!!!鮫島さん、犯人捕まって良かったですみませーん!!丸山さん、なんだかんだ…すみませーん!」

 

横田は謝る。

 

「でも言わせて欲しい。顔を見ただけで分からない!!ましてや約束については分かるわけがない!エスパーじゃなくて、マスターですから。あとバーを約束の場所にしないで?閉店する可能性考えなかった?そして営業時間に来て?あとお前ら、全然酒飲まねぇな。バーなのになんでお茶ばっかり出してんだよ。」

 

愚痴をこぼした後、横田は気を取り直し挨拶をする。

 

「皆様、またのご来店をお待ちしておりますみませんでしたぁ!!!!!」

 

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もう、楽しいの一言。

文章で書くと伝わりにくいが、セリフと頭の中の気持ちで照明が変わっていた。

途中、横田の混乱のシーンで「えっ…と、ちょっと待っててくださいね………どこだ?ここか。」

とスポットライトの位置に自ら入ったり

「あぁもう頭が真っ白だ!!」「えっ今どっち??」と叫ぶシーンがある。

てんやわんやが面白い。

 

そして鮫島に胸ぐらを掴まれるシーンがあるのだが。

1人なので掴まれてる風になる。それがまたいい。

でもそんな首締まってる時にまで洒落をいう横田。

「マスター」の響きがかっこいいからとかでバー始めてそうなキャラクターが良かった。

横田のバーテンダーの仕草は、結構凝っていた?ので、きっとやりたかったんだろうな。と思った。

確かバーテンの服が着たくてこの話を考えたとか。

 

全体的に照明の使い方が面白くて好きだったのだが、

この話は分かりやすくて良かった。

さりげなく「MK5」とかのネタを混ぜてくるのもいい。

 

この話が1番たくさんの登場人物が出てきた。

本当にそこにいるような目線が、それぞれの登場人物によって違って良かった。

そこにいるように見えた気もした。

蛍の光を流すのも良かった。4本目の最後だったのもあって、いい感じに終わった。

 

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3本目を除いた3本はさりげなく繋がっている部分があった。

2本目の男が最初に書いていた物語に出てきた《バイト先にシフトを出し忘れた彼女》は《先輩に制服を着られた彼女》であったし

2本目の男の記事をハマって読んでいたのが、4番目のバーのマスターであった。

2公演みた2回目に確認したら、しっかり《マスター》の名前で書き込んでいた。

www とか使うタイプだった。

この…さっきの話の1部とかが入ってくる演出、とても好みで天を仰いだ。

もしかして伊坂幸太郎とか好きなのではないか?とさえ思った。今度機会があれば聞いてようと思う。忘れてなければ。

 

そして割愛したものの、各話の間には1分程度の映像が入っていた。

それもよく見ると次の話の前フリだった。

1話目終わりは、「よりによって 第2弾始動!!」といった告知映像。

脚本を考えて悩む姿が映像になっていた。

これは2話の作家志望の男の前フリだったと感じた。

 

2話目終わりは、「恋愛映画を作りたい」という告知映像。

携帯を落として、拾ってくれた人に恋に落ちた。

でも即振られて「散りに散って」というタイトルが現れる。

これは無理矢理だが、3話目が少しラブストーリーの要素もある…というか、2人の物語である所に関わってるように思えた。

 

3本目の終わりは、「手応え」のインタビュー。

盛りに盛った話をする吉村。

その中で「一人ミュージカルをしたい」と言う。

おそらくこれは、4本目のラストで急に始まるミュージカルへの伏線。

 

話と話の繋ぎですらも何かしらの小ネタをぶっこんできていた。

細かい。ことある事に細かった。

そして言葉選びや言葉遊びが多い。

余裕でどストライクだった。

 

そして千秋楽のカーテンコールに事件は起きた。

 

2/4 吉村卓也の誕生日である。

2回目のカーテンコールの途中で、バースデーケーキが登場。

ひとしきり喜んだ後に吉村さんが言う。

 

よりによって。と。

 

開演前に上の階でアンケートを読んでいたところ

プロデューサーが「ケーキどうなってる?」と話したのを聞いてしまった。と。

よりによってサプライズを知ってしまった吉村さん。

あまりにも綺麗すぎる"よりによって"な話。

例文として、千秋楽として大正解だと思った。

 

カーテンコールの中で、今回は自分の好きなキャラクターばかりだと言っていた。

そして何よりもやりたかったのは1本目だと。

「絶対にあの格好で登場してやる!」と思ったという。

インパクトは大成功であった。

そして恐らく、吉村さんの思惑通り、会場全体が1回引いた。と思う。

"イケメン"を冒頭でぶち壊す演出はとても良かった。

その後にオタク気質な人物が現れ、不幸せそうな男が現れる。

最後にようやく、(一応)普通の人が出てくる。

恐らくこの順番もよかった。

最初がインパクト。

真ん中ふたつが物語として厚みがあって、最後は素直に楽しい。

 

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伊村製作所の閉鎖で初めて生で吉村卓也の考えたものを見て、

その時、よりによって最後の1回のタイミングで知ったことを後悔するほど面白いと思った。

どうにか、なにかでまた見ることが出来ないか。そう願った。

 

一人舞台が発表され、脚本が吉村さんだと知らされた。

どれほど待ち望んだことか。

全部行きたい。全部観たい。そう思った。

でも結局、申し込む時に不安になった。

好きだとはいっても、閉鎖の時に見た数本と、Youtubeなどで見た数本しか知らない。

もし好きじゃなかったらどうしよう。

そう不安になって、2公演だけにした。

初日。

面白くて楽しくて仕方がなかった。

多分きっと、いやこれはもう絶対に。

私は吉村卓也の作る話が大好きだと思った。

初日をみてすぐに、公演を観に来ることの出来ない友人に内容を全部伝えた。

書きたくて、話したくて仕方がなかった。

職場の先輩にも伝えて、社長には来て欲しくてネタバレなしの宣伝までした。(結局は観に行けなかった。)

とにかく面白いと思ったし、観て欲しいと思った。

観れないのであれば全部伝えたい。と思って今書いている。

僅かな文章能力でどれほど伝わるのか。

少しでも気になってくれたり、次があった時に観たいと思って貰えたら。

 

その間私はまた、吉村卓也作の何かが見れることを切に願っていると思う。

 

「よりによって、解散の寸前に好きになるなんて。」と思っていた気持ちが

「あの時知れてよかった。」と心の底から思えるように。

 

吉村卓也が今回の脚本で書いた文字、25,000字。

オタクがその感想で書いた文字、約15,000字。

ちょっと面白いなと思った。